このオペラに限りませんが、ドビュッシーの代表作はどれも、感傷を排している点、乾いている点で、邦楽とどこか共通点があるように思います。モーツァルトからワグナー、マーラーまでは感情の振れ幅が極大化する方向に歴史が進んでしまっているようですが、ドビュッシーが登場して急に大人になる。達観したような大人の音楽になる。
それまで自分の内側にむかっていた視線が、180度転換して外側にむかって開かれた、そんな印象ではないでしょうか。
そして、少なくともオペラに関しては、それ以後に、これほど熟達した、精神的に成熟した、完成度の高い作品は現れていないように思います。
幻想的でありながら、きわめて知的な作品。ひょっとすると、現代人がもっとも親近感を感じられるオペラかも知れない。
このDVDについては、現代の不条理劇的な演出の効果に触れる必要がありますが、それはまた改めてエントリーします。(それと小沢征爾の後任でウィーン国立歌劇場の監督になる指揮者についても。)
私のもっとも好きなオペラの一つなので、今後このブログで5〜10回は登場する予定の作品です。
次に登場するときには、主にメーテルリンクの原作と、このDVDの演出についてコメントする予定です。