2008年03月31日

牧人の王 MOZART22

モーツァルト19歳の作品。22のDVDセットの中で、いちばんプレーヤーにかけた回数が多い作品です。アレキサンダー大王と、大王が侵略した小国の羊飼いが主人公。(実はその羊飼いが小国の隠れた血筋の後継者)

この上演は、いわゆる現代的な演出が成功した模範例だと思います。きわめてシンプルなセットと、シンプルな衣装。登場人物は5人だけ (合唱は出てこない) で、舞台セットに用いられるのは、モノクロの切り絵と影絵のみ。

序曲がはじまると、5人の歌手が現代のふだん着のまま舞台のソデから現われ、「牧人の王」と書かれた箱を見つける。箱を開いて、くじ引きするような身振りで役柄をきめていく。その後も、ところどころで、“これは今ここで歌手たちが演じているお芝居なのです”、と匂わせる仕掛けが出てきます。

しかし、物語が高潮していくと、主人公と恋人は、演じているだけのはずの役に没入してゆき、思い乱れ苦悩するようになる。見ているコチラもだんだん熱くなってきます。劇場の観客が緊迫するのも伝わってきます。

ストーリーの柱になっているのが、貧しかった羊飼いが王国の後継者だと分かり、いったんは城へ行くことを拒むのですが、やがて自らの運命として受け入れる。主人公は、自分の人生で演じる「役割」が大きく変わるわけです。

この演出は、その筋をさらに強調する仕掛けであるように見えます。観客に自分たちも人生で振りあてられた役を演じているにすぎない、と気付かせようとしている。その役割を楽しめるときもあれば、役割ゆえに、その役割がおしつけてくるものゆえに、苦しむこともある。本当の自分は、別のところにいる、と感じている自分。

ここまでは演出の話です。音楽については一言だけ。19歳のモーツァルトの若さ、あふれでて、やまないものを感じることができます(しかも決して単純な音楽ではない)。演奏もくりかえして聴くに値する出来映え。



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posted by K at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | MOZART22 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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