2008年04月11日

私のベスト3

最近あまりDVDを愉しむ時間がなかったのですが、きのう久しぶりにクライバー指揮の「カルメン」を見ました。そのあと、好きなオペラの好きなシーンを、何枚かプレーヤーにかけて見つつ、ベストシーンをリモコンでぴょんぴょんチョイスしながら、いま一番好きなDVDが何かを考えてみました。

<ベスト3>
・「フィガロの結婚」ベーム指揮1966年の
  ザルツブルグ音楽祭の録画。
・「カルメン」クライバー指揮1978年
・「椿姫」ネトレプコ主演2005年



ごらんになった方には同意していただけるかと思いますが、この3本はまさに世界遺産級ではないでしょうか。図らずもすべてウィーン歌劇場になりましたが、作曲家はダブらないで良かった。

【「フィガロの結婚」ベーム指揮1966年】
ベーム指揮のものは、映画版や日本公演など各種ありますが、決定版はこれしかありません。モノラルでモノクロなのに、これが一番美しく見えるのです。歌手が本当に生き生きしているからだと思います。1幕のレリ・グリスト(スザンナ役)の表情や身のこなし、一挙手一投足がモーツァルトの旋律に合わせているかのようです(彼女はバレエをやっていたに違いない)。ケルビーノに向けるまなざしもユーモラスで可笑しい。フィガロ役も本当に愉快な上機嫌のフィガロです。そしてエディト・マティスのケルビーノ。ベームのレクイエムやリヒターのマタイで歌っているソプラノがなんとこの盤ではケルビーノを歌っている!!そしてその歌唱がまさに迫真なのです。その他に見事なセットや衣装など、この盤の美点は挙げたらきりがない・・・。歌手自身がこんなに楽しんでいる舞台はほかにあるでしょうか。

【「カルメン」クライバー指揮1978年】
クライバーがどう考えても映りすぎなのですが、クライバーの指揮ぶりを見たい人は多いのでしょうし私もその一人です。この盤では若くて自然体のクライバーが見られます・・・また、この盤の間奏曲の美しさは、まさしくクライバーそのものです。歌手ではドミンゴよりもカルメン役のロシア人歌手に魅かれます。オペラ歌手にしか望めないレベルの人間の声、すばらしいノドを持った歌手です。このひとの声をライブで聴いたらどんな気持ちがするだろう・・・。2幕の冒頭のセットと合唱の素晴らしさ、終盤のジプシーの魅惑的な歌唱・・・この盤の美点も数えきれない。

【「椿姫」ネトレプコ主演2005年】
オペラは舞台芸術ですから、歌手が美人過ぎるというのは、けなす理由にも毛嫌いする理由にもなりません。1幕のネトレプコの美しさは筆紙に尽くしがたい・・・男性は死ぬ前に一度見てみるべきDVDです。女性も老いる前に一度見てみるべき上演ではないでしょうか。現代的な演出も効果を上げています。

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posted by K at 11:47| Comment(36) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月31日

牧人の王 MOZART22

モーツァルト19歳の作品。22のDVDセットの中で、いちばんプレーヤーにかけた回数が多い作品です。アレキサンダー大王と、大王が侵略した小国の羊飼いが主人公。(実はその羊飼いが小国の隠れた血筋の後継者)

この上演は、いわゆる現代的な演出が成功した模範例だと思います。きわめてシンプルなセットと、シンプルな衣装。登場人物は5人だけ (合唱は出てこない) で、舞台セットに用いられるのは、モノクロの切り絵と影絵のみ。

序曲がはじまると、5人の歌手が現代のふだん着のまま舞台のソデから現われ、「牧人の王」と書かれた箱を見つける。箱を開いて、くじ引きするような身振りで役柄をきめていく。その後も、ところどころで、“これは今ここで歌手たちが演じているお芝居なのです”、と匂わせる仕掛けが出てきます。

しかし、物語が高潮していくと、主人公と恋人は、演じているだけのはずの役に没入してゆき、思い乱れ苦悩するようになる。見ているコチラもだんだん熱くなってきます。劇場の観客が緊迫するのも伝わってきます。

ストーリーの柱になっているのが、貧しかった羊飼いが王国の後継者だと分かり、いったんは城へ行くことを拒むのですが、やがて自らの運命として受け入れる。主人公は、自分の人生で演じる「役割」が大きく変わるわけです。

この演出は、その筋をさらに強調する仕掛けであるように見えます。観客に自分たちも人生で振りあてられた役を演じているにすぎない、と気付かせようとしている。その役割を楽しめるときもあれば、役割ゆえに、その役割がおしつけてくるものゆえに、苦しむこともある。本当の自分は、別のところにいる、と感じている自分。

ここまでは演出の話です。音楽については一言だけ。19歳のモーツァルトの若さ、あふれでて、やまないものを感じることができます(しかも決して単純な音楽ではない)。演奏もくりかえして聴くに値する出来映え。



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posted by K at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | MOZART22 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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